所得税

Q1:10.21%の源泉所得税を勝手に引かれて振り込まれた場合

nandn_admin

ご相談内容

報酬源泉所得税について(20代・男性)

今年から脱サラをして、ようやく個人事業主として請求書を出し始めたITエンジニアですが、そのうちのD社が、請求金額から10.21%の源泉所得税を引いて振り込んで来ました。D社に問い合わせをしたところ、「一応、個人事業主への支払いに際しては源泉所得税をすべて引きます。どうせ、確定申告時に戻ってくるから損得はありませんので。」とのことでした。予定額の約90%の入金であったので、10%の所得税の前払いは正直きついですし、同じ業務に対し、源泉する会社としない会社があるのも不思議ですし、そもそもどうすれば良いでしょうか。

ご相談の回答

D社は過去同様の指摘が税務署からあったのでしょう。対象者からの源泉所得税の天引き及び翌月10日までの納付はD社側の義務となり、モレを指摘された場合、延滞税やあなたからの過払い分の返金作業など、とても手間となるので、ならば「疑わしきは徴収」という判断をしたのでしょう。その気持ちもわかります。

そもそも個人事業主が受け取る報酬などに代表される源泉所得税は、よく「204」と言われます。文字通り所得税法204条に記載されているからです。この表は一度見てみると面白いのですが、このご時世大丈夫ですか、と言いたくなるような限定列挙です。「職業拳闘家」「プロボウラー」「プロレスラー」「「弁護士」「税理士」「ホステス」「コンパニオン」「服飾デザイン」「遊園地のデザイン」「映画俳優」「腹話術師」「物まね師」などなどです。一方、源泉の対象じゃないよとしてわざわざ記載されている例の職業としては「TVのモニター」「試験問題の出題料」「字又は絵等の看板書き料」「配膳人及びバーテンダーの報酬・料金」などです。

これらを、よく観察すると、「(過去を含め)多額の収入が起こりえる職業」と言えるのではないでしょうか。204の表に出ている職業こそ、若者が就職活動をする際に参考にしても面白かもしれません!一方、急な大金が舞い込む可能性のある職業ですから、10.21%の「足跡」を他人(ここでいうD社)に残させることで、税務署はその本人からの所得税の申告にその収入がちゃんと計上されるかの答え合わせが出来るわけです。

話しを戻しますと、あなたがこの204該当職業であるかどうかを、あなた自身が先方への請求書に事前に記載し表明しておけばD社側は判断に迷わないのではないでしょうか?「*上記ご請求内容は、所得税法204条の源泉徴収対象ではありません。」というような。

また現状、D社は源泉あり、他社は無し、となるとあなた自身の所得税の確定申告に際し、税務署もどちらが正解かが分かりませんし、どちらかが間違った処理をしていると判断されます(同じ業務している前提ですよ)。いずれにせよ、みんながドキドキすることになります。

仮に、源泉徴収義務から外れる、つまり204の対象でない仕事ならば、D社は単なるあなたに対する「未払金」が生じていますので、D社が翌月10日に納税してしまう前に、その納付に待ったをかけ、税務署ではなくあなたに10,21%を振り込んでもらうよう至急動くのが吉です。

税理士
税理士

ITエンジニアであるあなたの業務内容によりますが、プログラミングやWebサイトの開発などは、所得税法で定められている源泉徴収の対象ではありません。そこにデザイン性が生じていたり、つまり間違えを恐れずいうと、同じ仕事でも人の技量によって、1万円から100万円などの幅があるような仕事ならば源泉を疑った方が良いかもしれませんね。小学生の遠足に帯同し写真を撮ってくれるカメラマンは源泉不要、雑誌、広告に掲載するためのカメラマンからは源泉要、という具合に同じ職業でも時と場合、シチュエーションにより違ってくるわけです。

この記事の筆者
二宮眞秀
二宮眞秀
税理士
難解な税務をできるだけわかりやすく解説いたします
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