Q1:分譲マンションの収益事業
ご相談内容
Aマンション管理組合では、年々上がる管理費や修繕費に頭を悩ませており、下記のような検討が出来るかどうかと理事から提案がありました。
- 空いている駐車場区画を外部に月極め、又は業者へ一括貸出する
- マンション屋上に携帯会社のアンテナ設置、又は太陽光発電設備の設置を認め、設置料収入を得る
- 自動販売機を置き、設置料収入を得る。
- 空いている管理人室をゲストルームとして貸し出す
いろいろと案は出るのですが、実際に収入を得た場合、税金はどうなるのかという質問もありなかなか前に進まない気がしています。どうすればいいのか教えてください。
ご相談の回答
法人税法上、マンション管理組合は「人格のない社団等」に該当し、収益事業を始めた場合は、法人税の申告が必要となります。得られる収入に対し、国税と地方税の申告と納税が必要となります。場合によっては、消費税の申告も必要となります(2年前が1000万円以上の収入がある場合又はインボイス登録をした場合)。上記の例ですと、おおよそ「不動産賃貸業」に該当しますので申告しないといけません。特に、令和5年10月から開始されたインボイス制度により、設置料を支払っている側において、誰に支払って(ここでいうとマンション管理組合)、その者がインボイス事業者かどうか、などより具体的な明示がされますので、注意が必要です。
法人でもないのに、法人税を納めるのですね?ただ、申告を誰がいつどのように行うのかがわかりません。また、これまでも駐車場の使用料としてマンション居住者から月額1万円ずつもらっていましたが、それも申告していませんでしたのでこれもさかのぼって修正しなければいけないのでしょうか。
マンション居住者(区分所有者)からの駐車場収入は「共済的事業」として収益事業たる駐車場業には該当しないと解されますので大丈夫です。
対策
まずは、マンション内の総会においてこれらの事業開始の決議と、マンション管理規約や定款に抵触しないかを確認してみてください。規約がなければ追加してあげてください。
次に、賃貸借契約等を締結してから2か月以内に、管轄税務署へ「公益法人等又は人格のない社団等の収益事業開始等の届出書」「設立届」「青色申告承認申請書」「申告期限の延長の特例申請書」「貸借対照表*資産0円、負債0円、剰余金0円*」「マンション管理規約」「(今回の)賃貸借契約書の写し*開始日を示す為*」「代表者がわかる議事録の写し」等を提出します。同様に、都道府県、市区町村にも提出します。
申告は、理事長が代表者欄に記名されることになります。マンションの会計期間の終了後2カ月又は3か月後に税務署へ申告と納税を行うことになります。ですので、収益事業用の通帳をマンション管理組合で作成し、他の管理業務と明確に分けて管理運営してください。
深堀
申告を行う際に、収入は明確ですが、そこから引ける経費については、法人税基本通達15-2-5(費用又は損失の区分経理)によって、判断していくことになります。
- 収益事業について直接要した費用の額又は収益事業について直接生じた損失の額は、収益事業に係る費用又は損失の額として経理する。
- 収益事業と収益事業以外の事業とに共通する費用又は損失の額は、継続的に、資産の使用割合、従業員の従事割合、資産の帳簿価額の比、収入金額の比その他当該費用又は損失の性質に応ずる合理的な基準により収益事業と収益事業以外の事業とに配賦し、これに基づいて経理する。
ここで注意が必要なのが、マンション管理組合が収益事業以外の事業に属するお金やその他の資産を収益事業のために使用した場合においても、これにつき収益事業から収益事業以外へ賃借料、支払利子等を支払うこととしてその額を収益事業に係る費用又は損失として経理することはできないという条文です。また、駐車場設備で使っているからといって、減価償却費を経費化出来るのではないか、という素朴な疑問もあるかと思います。がしかし、駐車場資産は、区分所有者の共有物であり、マンション管理組合の所有別ではないことから、通常、マンション管理組合の収益事業にかかる所得計算において減価償却費が計上させることはないと認識しております。
収入から控除出来る費用はあまりないかもしれません。おおよそ、収入から約30%の納税が出ることを前提に検討するのが良いと思います。金額の大小関係なく税務申告が必要ですので、やるならば、いろいろと同時に収益事業を始める方が、手間が少ないかもしれません。