法人税

Q:売上原価と販管費の話

nandn_nino

ご相談

Q:売上原価と販管費の違い(30代 男性)

転職し新しい会社で経理を任されることになりましたが、勘定科目がオリジナルな名称過ぎる上に、売上原価(仕入)と販管費のイリクリが激しいです。部長に確認したところ「どこに入っていよう利益は同じだから」という理由でそのままでいい、とのこと。どうもしっくり来ません。何かストンと落ちる説明ってありますか?

ご質問に対する回答

よく聞きますし、よく見かけます。ただ、新参者が勘定科目を見直したりすると、間接的に、それをそのように処理していた上司や部長を否定する行為、みたいないやな雰囲気があるのもまた経理の難しいところです。「前期比較が崩れる」とかなんとか。でも、間違っているものは間違っているし、いつか正しい形にするためには過渡期はしょうがいないと思います。
私が原価と販管費の一発で分ける方法としてよく口にするのが、これです!

税理士
税理士

売上高が10倍になった時に、同様、10倍になるものが原価。

税理士
税理士

粗利率が毎期一定である美学。販管費が毎月定まっている安心感。

税理士
税理士

当たり前の勘定科目名称を使わない「悪目立ち」

深堀

これって結構判断材料として明解だと思っています。難しい事抜きにして。現在の売上が10倍になったからといって、オフィスで使う消しゴム(消耗品費)を10倍買うわけではないでしょうし、本社の賃料が10倍になるわけでもない。だから販管費。工場で働く人の給料は10倍(人数的にも)になるでしょうから、原価性の賃金。だから、売上原価。この基準でいいんだと思います。

また、会社の決算を見た時、銀行なども、粗利率が一定(改善していくのはGOOD)であれば、「今期の売上は前期比1.5倍です。」と聞けば、粗利も1.5倍なんだろうなと。販管費は毎月4千万円です。ということならば、×12なんだろうなと。思えるわけです。加えて、税務署などは、営業利益率よりも粗利率の乱高下を注視していると思われ、理由があればいいのですが、理由なく、売上10倍なのに、粗利率が下がっている、、となると、余計な原価や棚卸高での調整をしているのでは、と疑う気持ちにもなるかと思います。

また、勘定科目については、その会社独自の科目名の方がわかりやすいという気持ちは十分わかりますが、それは「管理会計」でやってくれ、という話で、決算書にその名称で入れておくと、かえって悪目立ちしてしまうと思います。たとえば、単に「旅費交通費」とすればいいものを「残業旅費」などとすると、「残業すごいの?」「給与課税の問題は?」みたいな悪目立ちするわけです。木を隠すなら森に隠せ、ではありませんが、森にビルを建てるような所業だと思います。トヨタが、三菱重工が、つまり大企業が使っていない勘定科目をオリジナルで生成するな、と。

また、原価と販管費の違いって、利益には影響しない、というだけではなく、法人税法的にも大きく違うのです。法人税法基本通達2-2-1にあるように、売上が判明していて、売上原価が未確定であっても、見積計上が認められる、のです。これって販管費では1円も見積計上などないですから、とても大きな違いなのです。

(売上原価等が確定していない場合の見積り)

2-2-1 法第22条第3項第1号《損金の額に算入される売上原価等》に規定する「当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価」(以下2-2-1において「売上原価等」という。)となるべき費用の額の全部又は一部が当該事業年度終了の日までに確定していない場合には、同日の現況によりその金額を適正に見積るものとする。この場合において、その確定していない費用が売上原価等となるべき費用かどうかは、当該売上原価等に係る資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に関する契約の内容、当該費用の性質等を勘案して合理的に判断するのであるが、たとえその販売、譲渡又は提供に関連して発生する費用であっても、単なる事後的費用の性格を有するものはこれに含まれないことに留意する。(昭55年直法2-8「七」により改正)

この記事の筆者
二宮眞秀
二宮眞秀
税理士
難解な税務をできるだけわかりやすく解説いたします!
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