Q1:前払金・前払費用・仮払金・建設仮勘定・前渡金の違いとは?
ご相談内容
経理処理をする時に、毎回、「前払金」「前払費用」「仮払金」「建設仮勘定」「前渡金」、もっと細かくすると「長期前払費用」などもあると思うのですが、この使い分けについて教えてください。
ご相談の回答
このようなマトリクスで見るとどうでしょうか?分別しやすくなるのではないでしょうか?
次に大事なポイントとしては、各会社における会計処理の継続性だと思っています。下記の例では、売上に直結する支払いは「前渡金」(まえわたしきん)とし、販管費に代わるであろう費用科目の支払い分は「前払費用」と「前払金」と決めました。要は、会計方針を定め、少なくとも、会計年度中は必ず同じBOX(勘定科目)に放り込むことです。
流動資産 | チェックポイント |
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前渡金 | 「商品仕入」など売上に直結ものに支払った先払い分【原価】 |
前払費用 | 「継続的サービス」に支払った先払い分【販管費】 |
前払金 | 「非継続的サービス」に支払った先払い分【販管費】 |
仮払金 | 最終勘定科目(目的・用途)が未確定なもの支払った先払い分。場合によっては現金で戻ってくる可能性もあるもの【未定】 |
有形固定資産 | チェックポイント |
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建設仮勘定 | 土地以外の有形固定資産に支払った先払い分【固定資産】 |
投資その他の資産 | チェックポイント |
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長期前払費用 | 「継続的サービス」に支払った1年超の先払い部分【販管費】 |
これを理解すれば「長期前払金」「長期仮払金」というのがなぜないのか?が理解できると思います。一時的なもの、使途が不明なものに、1年以上前からお金を出すということがあまり得策ではない、ということにもつながります。
ただ、実際問題、「仮払金」や「前払金」が1年以上帰ってこない、精算出来ていないなんていうもあるのですが?
深堀
意味の無い「長期前払金」や「長期仮払金」については、今度は別の税務上の問題が発生します。それは、「金銭を貸し付けているのと同義」としての「利息計上」の問題です。「仮払金」として社長に3千万円を会社が出していたらどうでしょう?
会社はすべての資産を有効に収益を獲得するために利用しなければならないその大事なお金を、社長に1年以上「仮払金」として放置していたとしたら、その大事な資金を利用して得られるであろうチャンス(機会損失)分を「役員賞与」として給与課税されるかもしれません。
また、相手先は社長ではなくて取引先の場合はどうでしょう。やはり、未収利息の未計上、もしくは「寄付金」として課税対象となる恐れがあります。これこそ「難解な税務」です。
ですので、会社の場合、その行動ひとつひとつが「将来的な売上につながるか。仕入・費用の削減等につながるか」という経済合理性に乗っ取って行動することが重要と思います(法法22条)
意味の無い説明がつかない「仮払金」や「前払金」には注意。また、「前払費用」「長期前払費用」も相手方と契約書や覚書等でしっかりとお互いのコンセンサスと取っておくことが重要。