Q1:私の持っている田舎の先祖伝来の一戸建てを、子供にあげよう(贈与)かと考えています。何か、注意点はありますか?価格などは全く分かりません。
ご相談内容
田舎の土地と建物を今のうちに子供に贈与しようかと考えています。その際の注意点はありますか?
ご相談の回答
まずは、土地と建物ならば、固定資産税納税通知書に記載されている「固定資産税評価額」を参考にして、おおよその価額を確認してください。そもそも納税通知書が来ていない、という場合もあります。それは課税標準額が土地30万円未満、建物20万円未満である可能性が大きいです。がしかし、固定資産税評価額は課税標準額の1倍から6倍ぐらいあるので、やはり、それだけでは贈与税がかからない、とは即答出来ません。
贈与する土地については、国税庁のホームページから、該当年分の路線価評価額もしくは評価倍率表で場所を特定し、平米数をかけて土地の評価額を出してみてください。建物については、固定資産税評価額をもとにしてください(3階建て以上の建物の場合は別評価必要)。
多少ならば贈与税を払ってでもあげようかと思いますが、ほかに何か方法はありますか?
売買という選択肢もあります。
対策
仮に、130万円の土地・建物を贈与すると、贈与税が2万円((130万円-110万円)×10%=2万円)ですので、「まあ、そのくらいならばいいか」という考え方もあります。がしかし、贈与での2つのデメリットは、
- 取得費の引継ぎ
- 生前贈与加算の持ち戻し
です。
「取得費の引継ぎ」ですが、贈与の2年後、今度はお子さんがその戸建てを100万円で他人に売却出来た場合どうなるのか、という問題です。その場合、先祖伝来の土地ということで「取得費」(購入時の価格)が分からないことが大半です。そうなると、「取得費の引継ぎ」ですので、やはり、当初購入時、つまりは購入価格不明で、お子さんは譲渡税の申告をすることになります。となると、概算取得費5%(つまり5万円)で購入したということになり、(100万円―5万円=95万円×短期譲渡39.63%=37万円)の譲渡税のがかかることになります。
ならば、130万円の現金をあげて(そこで現金贈与分として2万円の納税はあります。もしくは、12月と1月に65万円ずつ贈与してあげれば贈与税もありませんので、1月に実行でも良いかと思います)、130万円であなたからお子さんが「買う」という選択です。そうすれば、「取得費の引継ぎ」はありませんので、次に100万円で売却した場合は、「売却損」となり、上記で37万円かかった譲渡税もかからない、という計算になります。
生前贈与加算の持ち戻しは、贈与後7年以内に、あなたの相続が発生した場合に、この贈与を持ち戻さなければならなくなる、という未来への呪縛を残すことになるということです。まあ、現金贈与していればその分は持ち戻し対象ですが(「相続時精算課税」を利用すればそれもなくなる手法もあります)。
深堀
その先の相続などを考えた場合、「贈与」ですと、上記の通り「生前贈与加算の持ち戻し」もありますし、一方、他の相続人との間での「特別受益」として、生前での財産分割の一部、としてやはりフューチャーされてしまう恐れもあります。「売買」ならばその取引自体で完成するので、私としては将来に遺恨を残しずらい「売買(譲渡)」の選択も視野に入れてもらいます。無論、贈与と売買時の価格設定は同一ではないのですが、逆に、売買ならば、近隣不動産屋さんで聞く、売買事例が、一番の精通者意見として有効であると考えます(上記例ですと、2年後に100万円ですから売買価格もズレていない前提です)
「贈与」ではなく「売買」も是非検討すべきかと思います。