法人税

Q3:賃料1年分一括前払節税という闇

nandn_nino

ご相談内容

Q1:美容室の店舗賃料の1年前払節税の相談(40代 男性)

東京都内で美容室を10年ぐらい経営しています。今期、利益が出過ぎている為、顧問税理士から「店舗賃料の1年前払節税」というものをすすめられました。主な条件は下記の通りです。

  1. ちゃんと契約自体をオーナーに切り替えてもらい1年前払とすること
  2. 翌年以降も継続すること
  3. 決算までに支払いまで完了していること

これで、今年の12カ月の家賃と来年分の家賃の合わせて24カ月分が経費となり、節税が出来るとのことですが、どうでしょうか。

ご回答

結論からいうと、「やるべきではありません」というか「やりたくも、やらせたくもありません。」
理由はいくつもあります。あたなも「こんなことして大丈夫かなあ!?」という一瞬の迷いが生じたことと思いますが、その直感は、あながち間違えではありません。自分を信じでください。
いくつか理由を述べます。

  1. 税務署が見た時、「ああ、そういうことをやる(発想する)会社(社長)なのね」という色眼鏡で見られないか?
  2. 銀行などが決算書を見た時、賃料が2年分計上されていることに違和感とそういう社長なのね、と見られないか?
  3. 重要性の原則からして、美容室の店舗賃料は売上に直結する原価ともいうべきものであり、金額的にも大きいことから、そもそも販管費の煩雑な作業を除去していいよ、程度の「短期前払費用」の概念の費用ではないこと。
  4. キャッシュが先渡しでオーナー側に行き、オーナーが破産などした場合に返還されないリスクがあること(初年度だけではなく、これから毎年12か月分の前払が生じ続けること)
  5. 翌年以降は、経費も同額であるから、1年間だけのバグでしかないこと。
税理士
税理士

無論、毎月1万円の倉庫代を1年間まとめて払う、とかは別です。契約もそうなっているならば、振込手数料を考えるとその方が得だし楽だからです。

深堀

もっと、突っ込んで考えると、ビルのオーナーからすると「この美容室は儲かっているんだ」と感じるわけです。そうしたら、次回家賃の更新時、賃料がどうなるか、言うまでもなく分かりますよね?。だって、裕福なんですもの。また、従業員からしても、自分の美容室が1年分も家賃を前払している(余裕)があるならば、もっと、給料を上げてくれ!って思うのが当然でしょう。そして何よりも、税務署からみても、利益と納税に対する考え方、のスタンスを疑われると思ってください。そのようなリスクが生み出す税の繰り延べメリットなど無いに等しいと思いませんか❓

この記事の筆者
二宮眞秀
二宮眞秀
税理士
難解な税務をできるだけわかりやすく解説いたします!
記事URLをコピーしました