Q2:遺言書に「お世話になった友人に100万円をあげてください」と入れたい。何か問題ありますか?
ご相談内容
私には日頃からお世話になっている大切な友人Aさんがいます。生前のお礼として遺言書を作る際に「お世話になった友人Aさんに100万円をあげて(遺贈して)ください」と入れたいと思っています。Aさんは家族ではないので大丈夫でしょうか? Aさんや家族が、面倒なことにならないかという心配もあります。どのような問題があるか、その場合の対策などもあれば教えてください。
ご相談の回答
相続税の申告書の特徴として、「基本、全員で同じ申告書で作成し申告する。」という共同提出書面となるため、つまりは、100万円をもらうAさんも、相続税の申告書全部を見ることになる、というのが最大の注意点です。総資産額から総負債、総税額まで確認出来てしまう、見られてしまうことなります。日本の相続税額の算出方法が遺産全体から税額を出すので、100万円に対し、0円の相続税の場合もあるし、約50万円の相続税になることもあります。加えて、友人Aさんは相続人でないので、1.2倍の相続税となりますので、最大約60万円の相続税がかかることになります。ですので、安易に被相続人(以下、あなた)の友人知人に金額の多寡に関わらず遺贈すると、残された家族は、相続税の申告作業をAさんと共同で行わなくてはならないことになります。
注意点は、Aさんにあなたの相続税の申告書全部を見られてしまうことです。
それは困りますね。家族はAさんの事を良く知りませんし、いい方法はないでしょうか?
対策
上記の例でいうならば、相続人から相続開始後において、あなたの友人Aさんへの「一般贈与」で行えば、Aさんは100万円全額がもらえることになります。ただし、この場合、相続人が本当にAさんに100万円をあげてくれるのか亡きあなたは知る由もないので、逆に、遺言書を作るぐらいのタイミングで、Aさんにあなたから一般贈与をしてしまうのはどうでしょうか。Aさんは相続人でもありませんので、生前贈与財産の持ち戻し対象にもならず、相続税の対象にもなりません。
なるほど、一般贈与にすればいいのですね。その場合に気をつけることがあれば教えてください。
仮に、上記スキームで、あなたがAさんに生前に贈与した場合、税務署が気になるポイントとしては、「あなたとAさん双方の意思」です。つまりは、あなたの財産総額を減らす目的で、相続人が主導的にAさんへあなたの口座から振り込んだだけではなかろうかと。Aさんとしても一般贈与の基礎控除額(110万円)以下ですので後でいくらかもらって相続人に戻す流れではなかろうかと。そう思われる可能性がある、ということです。死期が近い時ならばなおさら注意が必要です。ですので、あなたとAさんが双方に贈与受贈の意思があったことを、後からでも証明できるようにきちんと事前に整えておくことが重要です。
あとで相続人が税務署から疑われないように事前の準備が大切です。
深堀
では贈与契約書さえあったらいいのか、という単純なものでもないと考えます。形式要件だけではなく、Aさんにその金額を贈与するだけの「ストーリー」があなた本人にあるべきであると考えます。その「ストーリー」はあなたからAさんへの直筆のお手紙でもいいでしょう。日付も残るので確定日付の代替えともいえます。ただ、受贈者Aさん側の(もらったよ)という意思確認も必要ですので、一方的に手紙とお金を送り付ける(もしくは振り込む)というだけではAさんの受取意思の確認にはならないと考えます。これこそ難解な税務です。Aさんが贈与を受け、ありがとうの形をどのように残しておくか、が肝心です。ですので、Aさんが積極的にかかわらないと出来ない行動として、あえて110万円の基礎控除を越えた贈与を行い、Aさんにおいて贈与税の申告書を提出し、それに見合う贈与税をAさんが納める、というのがAさんの受贈意思表示の最大の盾(タテ)となると思います。無論、贈与契約書もある前提の上です。あなたの相続開始に近ければ近いほどやっておくことに意義があります。111万円の贈与で、1,000円の贈与税ですから。